マルチツールについて

Ryu Shobi

2006年12月07日 15:04

キャンプツーリングの道具としては絶対に必要というものでは無く「あれば便利」というレベルの道具だが、何かあった時には非常に心強い働きをしてくれるものでもある。
マルチツールもキーホルダーとしてぶら下げておくものから工具として扱えるような重量級ものまで幅広く存在するが、ここでは補助的な役割を果たす軽量クラスのマルチツールを紹介したい。



■ スイスアーミーナイフ

□ VICTORINOX

名前までは知らないまでも形を見れば「ああ、アレか」と思う人がほとんどと思われるアウトドアツールの代表的な製品がビクトリノックス社のマルチツール。(2005年にはウェンガーを取得し、2つのブランドで展開している)
うんちくは専門のサイトが無数にあるので省かせてもらうが、キャンプツーリングで役に立つと思われるモデルは基本的なスタイルを維持しているコンパクトなオフィサーモデルシリーズあたりまでだろう。
雑誌などではスイスチャンプなどの超ド級モデルが読者へインパクトを与えるのに十分なので取り上げられてしまうが、持ちにくい上に不要なツールがゴテゴテついていることからシンプルな使い方を出来るソルジャーかオフィサーモデルのトラベラー、もしくはコンパクトあたりを薦めたい。
ナイフ・缶切り・栓抜き・コルク抜き・ハサミなどが装備されたトラベラーなら小技を効かせた働きをするのに十分なポテンシャルを持っているし、隠れた名道具として「ツースピック(つまようじ)」も内蔵されている。
これ以上の機能はキャンプに於いて専用品に敵わないので、実用的な範囲で考えた場合にはスッパリと諦めたほうが懸命だと思う。
個人的に重宝したのは[栓抜き][ハサミ][ツースピック]あたりだろうか?

「車載工具があるし、栓抜きとか使わない」という人はシンプルなブレードのみの「スーベニアAL」や、ミニサイズになるが「ランブラー」「ミニチャンプDX」あたりがお薦めだ。
特にミニサイズに装備されているミニハサミの大きさが秀逸で、器用さも要求されるが手の爪を切ることも可能。(実際に連泊中にこのハサミで伸びた爪を切ったことあります)
私が愛用しているのは「ミニチャンプDX」だが、ちょっとした袋の封を開ける作業などでは十分な働きをしてくれ、ウエストバッグの隙間に入れておけるのでパッキング時の負担も少ない。
尚、ミニサイズシリーズには[ツースピック]が無く、[ボールペン]に変更されている。
どちらがいいかは意見が分かれるところだろうが、私は[ツースピック]のほうが良かった…

VICTORINOX(ビクトリノックス) ソルジャーAL

VICTORINOX(ビクトリノックス) トラベラー

VICTORINOX(ビクトリノックス) スーベニアAL

VICTORINOX(ビクトリノックス) ミニチャンプDX



■ プライヤー系マルチツール

スイスアーミー系ツールと違いってプライヤー(ペンチ)の機能を主軸に置いたマルチツールとなり、日本ではレザーマンとガーバーの2社が有名。
スイスアーミー系ツールとの差は、ペンチが主体となっても大柄なボディのおかげか比較的しっかりしたブレードを装備していることが多く、多様な使い方に対応できる点だ。

□ Leatherman (レザーマン)
1982年に創立されたティム・レザーマン氏デザインの「つかむ」ことをメインに考えたペンチ付きツールナイフ。
その美しいデザインは無骨になりやすいツールナイフの中で一層の美しさを輝かせる。
私は「レザーマンミニ」を暫く使っていたが、道具としての完成度は非常に高く飽きのこないデザインは今でも印象が非常に強い。(ミニだったからという訳ではないが仕事中に無くしてしまった)
ペンチは稼動する部分を持つにも関わらず非常に頑丈で信頼性の高い働きをしてくれるので、スマートにペンチ系マルチツールを持ち歩きたい人にはお薦めのブランドだ。


□ GERBER (ガーバー)
1939年にジョセフ・ガーバー氏がギフト用のキッチンナイフを作ることから始めたアメリカの代表的なナイフメーカーで「マルチプライヤー」シリーズはペンチ付ツールナイフとして有名。
ガーバー社の製品は軍採用品にもなっており、信頼度に関しても非常に高い支持を受けている。
フラッグシップモデルのマルチプライヤー800 レジェンドをはじめ、ユーザーのニーズに合わせて各種のモデルを用意しているが無骨なデザインには好き嫌いが強く出ると思われる。
しかし、ペンチ部分の構造などはマルチツール界で最も頑丈と言われる程の信頼性を誇り、車載工具のプライヤーは不要とまで言う人がいるくらいだ。
ペンチ部分を重視して選ぶのであればGERBER社がお薦めだ。


□ BUCK (バック)
農耕具を専門とする鍛治職人だったH・Hバック氏が開発した技術を元に息子であるアルフレッド・バック氏が1961年に創立したナイフメーカー、#110「フォールディングハンター」が大ヒットして有名。
そのBUCK社がペンチ付ツールとして開発したのがBUCKTOOLだが残念ながら全て廃番となってしまい、後継モデルも存在せず、僅かしか無いであろう流通在庫もしくは中古でしか入手出来なくなってしまった。
ペンチ部分が独特の折りたたみ方法で格納されるので、展開時にグリップ部分を強く握ると剛性の弱さを感じ取れてしまうがペンチ部分は非常に精度の高い噛み合わせを実現し、ナイフも気持ちよいくらいに鮮やかな切れ味を持っている。
また、ドライバーや栓抜き・缶切りと一通りの機能をコンパクトに収納しているが、ナイフを出したままグリップを折りたたむとRを描いた形状によって手にフィットする握り心地が得られる。
model 360は現在も愛用し、キャンプ時には必ず持っていく。



基本的にマルチツールは「ちょっとした作業を補う」のが主な仕事となる。
薪を切る・割るなどの作業であれば鉈や鋸を別に用意したほうが良く、無理な作業は道具を壊すだけではなく作業者に怪我をもたらすこともある。
自己満足でフラッグシップモデルを持つも良し、単なる道具としてスタンダードモデルを持つも良しだが、あれば必ず役に立つ道具と言い切れるので一つは手にしてはどうだろうか?

これからマルチツールを揃えるのであれば私のお薦めは以下の2つ。

VICTORINOX(ビクトリノックス) トラベラー


LEATHERMAN(レザーマン) juice(ジュース)/S2

どちらも「ナイフ」「ハサミ」「コルク抜き」「栓抜き」「缶切り」が装備されて日常のちょっとした道具が必要なシーンでは必ず役に立ってくれる。
また、デザインも優しく大きさ・重さも程ほどに抑えられているので持ち運びにも苦労しないはずだ。

紹介したメーカー以外にも多くのメーカーが存在するが、ペンチ付マルチツールはLEATHERMANとGERBERの2社が市場を抑えてしまっている状態に近く、ディスカウント店で似たような製品を見かけることもあるがコピー品とも思える品まで存在する。(コピー品は、ブレードの素材や各部の仕上げは比較する必要も無い程の劣化具合だが…)
また、スイスアーミー系はVICTORINOXの1社独占に近い状態になってしまっているので他社の選択をしようにも現物を手にとって確認できないなど苦難の道が待っている。(最近はZippoブランドなどからも出ているが、モデルは少なく選択の余地は多くない。
趣味の品としてこだわるなら苦難の道を歩むのも悪くは無いが、単純に道具としてそろえるのであれば上記3社から選ぶのが無難で入手にも困らないと思う。

あなたにおススメの記事
関連記事