液燃ストーブの選択について

Ryu Shobi

2008年03月07日 11:50

一口にストーブと言っても幾つかの種類に分かれる。
その中で灯油やガソリンなど通常の温度時に液体状態を保つ燃料を使用するストーブを「液燃ストーブ」と呼んでいるが、今回はその液燃ストーブを紹介しよう。

■液燃ストーブの燃料

液燃ストーブで使用される燃料は更に幾つかの種類に分かれる。
その燃料は大きく分けて以下の通り。

1)ホワイトガソリン(白ガス)
2)自動車用ガソリン(赤ガス)
3)灯油
4)アルコール

これらは全て一般に入手できる燃料だが、その燃料を使うストーブ側の都合で専用品となったり、幾つかの燃料を使い分けできるマルチフューエルタイプに分かれる。

1)ホワイトガソリン(白ガス)
通称「白ガス」と呼ばれるナフサ燃料系のガソリン。
可燃性は高いもののオクタン価が低く、自然燃焼に向いている。(煤などが出にくい)
キャンプ用品店などでランタン・ストーブ用に売っている専用燃料は大抵がこのタイプ。
また、ハクキンカイロ用ベンジンやZippoライターオイルもこの部類に属するが、成分が若干違うことにより揮発性や沸点などが微妙に変化しているので指定燃料以外は使わないのが安全だ。
(自己責任で使っている人も多いが、事故などが発生したときも責任を負いきれるか判断してから行うこと。)

2)自動車用ガソリン(赤ガス)
通称「赤ガス」と呼ばれる自動車用にオクタン価が高くなるように精製され、各種添加剤が投与された自動車エンジン用ガソリン。
何故、赤ガスと呼ばれるかはガソリンに薄い赤色の着色が施されていることに起因する。
(これは混油を防ぐために意図的に着色されたもので、精製過程を経たレギュラーガソリンは基本的に無色透明)
キャンプに於いてはバイクのガソリンタンクなどから供給可能ということで長期キャンプ時にキャンプ専用燃料を遂行・調達する必要が無いメリットが挙げられる。(バイクのガソリンタンクに常に常備されている)

尚、白ガス専用機器に赤ガスを使った場合、ノズル部分などに煤が溜まる「目詰まり」を起こすことがある。
元々1:7や1:10など通常気圧の数倍はある圧力の中で点火することを前提に調整されている自動車用ガソリンを通常気圧化で燃焼させるので、完全に燃焼しきれない成分が残ってしまうのが主な原因。(オクタン価の違いが謙虚に出る条件でもある)
ハイオク・レギュラー問わずに現在の無鉛ガソリンは添加剤が投入されており、あくまでも「高圧縮内燃機関用燃料」として調整されているので赤ガスをストーブ燃料として使う場合に煤が出るのを避けることが出来ない。
専用機器以外では非常用として使うことも出来るが、上記の理由から赤ガス使用後に点検する必要が高い。(最悪のケースでは使用中に目詰まりを起こす可能性がある)

3)灯油
お馴染み石油ストーブでも使用される「白灯油」を意味する。
灯油自体はの沸点が170℃付近から上になり、赤ガス(30℃付近から上)・白ガス(80℃付近から上)と比べて扱いやすく、保管も比較的簡単な部類に属する。
その代わり燃焼力などに於いてガソリンストーブよりも劣る面がある。
但し、入手性についてはガソリンスタンドがあれば確実に入手可能、しかもポリタンクが使用可能(ガソリンの場合、販売店では専用の金属製タンク以外への給油が法律によって禁止されている)なので運搬する手段に苦労しないのが良い。

4)アルコール
この場合は薬局などで入手可能なエタノール・メタノールを意味する。
火力などはガソリンなどと比べて低いものの、大抵の薬局で入手可能な医療用アルコールも対象に入る為に入手製の高い燃料として評価されている。
飛行機で移動する場合には(荷物を預けるにしても)ガソリンなどを持ち込めないが、少量の医療用アルコールであれば問題ない場合も多く、たとえアルコールの積載が認められなかったとしてもアルコールストーブ本体だけを持ち運び、移動先の現地薬局でエタノールなどを買い求めて使用するなど全世界で通用する運用が可能となる。
この場合、ガソリン式などは車が無いと入手が難しかったりするが、エタノール・メタノールであれば薬局で入手できるので燃料入手という問題が手軽に解消できるメリットを持っている。

■液燃ストーブのタイプ

形状としては2種類が存在する。

1)分離型
バーナー部と燃料タンク部が分離し、燃料ホースで接続されているタイプ。
最大のメリットはタンクが別となることで火点が低い位置になり、コッフェルなどを乗せても安定していることがある。
また、自分の好みの容量の燃料タンクが使用でき、給油も楽というメリットがある。
(予備の燃料ボトルを持ち合わせていれば調理中でも簡単に燃料補充が出来る)
デメリットとしてはホースなどのパーツがむき出しになっているので燃料漏れなどのトラブルが一体型より発生しやすい点と消火後のバーナー部がすぐに冷えてしまうので再点火にはプレヒートが必要となる場面が多い点だろう。
しかし、現在の日本で入手可能な液燃ストーブでは一般的なタイプとも言え、上位モデルではトロ火も扱える製品があるなど進化し続けている製品がある。
これから購入するならこの分離型をお薦めする。

2)一体型
バーナー部と燃料タンクが一つのボディに納められている。
古くから存在する液燃ストーブの形式でもある。
パッキングスペースを効率よく使うことが出来る点やホースなど余計な部品が無いことで燃料漏れなどのトラブルに遭遇しにくいなど構造的な面で有利性を持っている。
また、自身の炎で燃料タンクが暖められることによって消化直後の再点火が楽などのメリットもある。
反面、火点位置が高くなることで大きなコッフェルを置いた時に不安定となりやすい点や、燃料タンクの交換が出来ない構造なので少量の燃料しか必要としない時でもパッキング容積は常に同じなどデメリットも持ち合わせている。

■ガスカートリッジ式ストーブとの比較
ガス缶を使用するストーブと比べた場合、火力や使い勝手に関してはガス式が有利となる。
では何故、現在も液燃式が存在するかと言えば「燃料入手性の高さ」が最も大きな理由になるだろう。
特に赤ガスを使えるタイプでは前記の通りバイクや車のタンクから燃料を取ることが出来、長期キャンプの場合に専用ガスを買い足すために奔走する必要も無い。
但し、白ガス専用の機器であった場合にはガス式と大きな差はみられず、むしろ使い勝手の面でガス式に人気が集まるだろう。
特にカセットガスを燃料とするストーブであればコンビニで入手可能なので白ガスよりも便利になる。

また、冬場などの低温時における着火性・燃焼力は明らかに液燃ストーブが有利。
地表温度0度近くになるような条件下ではガス式ストーブの場合、一部の低温専用ガスカートリッジ以外は着火すら出来ないことも多い。(仮に着火しても弱火程度の炎しか得られず、火力が上がらないなど本来の性能を発揮できない)

使い勝手においては液燃タイプのストーブが火力調節が細かく設定できず、「強火」「中火」「消火」など大雑把な火力調節となってしまうモデルも多い。
一部のモデルではトロ火まで細やかな調節を可能としている製品もあるが、全ての製品ではないので注意が必要だ。

点火手順もガス式は調節バルブを少しあけて火をつけるだけに対し、液燃式はプレヒートと呼ばれるバーナー部付近や根元に専用着火材や燃料を少量だけ垂らし、火をつけることでジェネレータなどを加熱させる作業が必要だ。
この作業を「儀式」として楽しむ人もいるが、一般的には面倒と言われることも多い。

また、液燃式は燃料の補給がガス式よりも自由なので常に満タンの状態から使用可能というメリットもある。
ガス缶だと残り少なくても使わなければ減らないので、料理の途中で缶を交換しなければならないなどローテーションを考える時があるが、液燃式であれば使用前に補充しておけばいいから便利だ。
(「つめかえ君」というガス缶同士で燃料を移すアイテムもあるが、出先では使い辛く、安全面と法律的な面からも疑問視する声があるので、万人にお薦めできるアイテムとは言い難い>私は愛用しています:笑)

以下にナチュラムで取り扱っている液燃ストーブを簡単に紹介するが、沢山の製品が世に出ているので液燃ストーブが気に入ったのであれば貪欲に情報を集めたほうがいいだろう。




Coleman(コールマン) スポーツスターII(プラスチックケース付)+ホワイトガソリン1L

フェザーストーブより若干大きめのサイズながらも小型液燃ストーブとして定番とも言えるモデル。
オーソドックスなスタイルは多くの人に愛されている。
オプションのポンピングキットを組み付けるとプレヒートが不要と思えるほど簡単に着火する。
値段優先だが、しっかりした性能も欲しいという人にお薦め。




OPTIMUS(オプティマス) NO.85 NOVA+

予算が許すならNova+を購入しておけば後悔しないだろう、正直なところお薦めモデル(値段以外)。
唯一の欠点は価格だけかもしれない。(簡単に購入できる金額ではない)
ホワイトガソリンだけではなく赤ガスなどにも対応可能なマルチフューエルストーブ。
しかも火力調節が細かく設定でき、トロ火も可能だ。




OPTIMUS(オプティマス) No.123R SVEA

アルコールストーブを除けば現在入手できる最もコンパクトなガソリンストーブかもしれない。
そのスタイルは昔から変わらず、700~1000ccの細長いコッフェルに収納可能などパッキングにも有利な面がある。
オプションで圧縮ポンプも用意されるなどポテンシャルは高い。
唯一の欠点は燃料コックを装備しない一体型故に消火してから暫くはノズルから燃料が滲み続け、SVEA123Rの周囲が少しだけガソリン臭くなることだろうか?
最初の液燃ストーブとしてはお薦めしかねるモデルだ。(2台目として購入、もしくはP-131など小型のガスストーブと併用するのをお薦めする)




スノーピーク(snow peak) ギガパワーWGストーブ

分離型のガソリンストーブでは購入しやすい価格に設定されている。(それでも、この価格ではまだ高いと思うが…)
Nova+などの値段では簡単に手を出せないという人は、こちらを試してみるのはどうだろうか?
但し、メーカー側の売り文句ではプレヒート不要とあるが、鵜呑みにしないほうがいいかもしれない。
私はギガパワーWGストーブを使っている場面に遭遇したことがないから想像で書くが、「着火はするが火力調節できるレベルではない」状態を以て「プレヒート不要」としている可能性もある。
Nova+も外気温が一桁前半の時にプレヒートが足りないと着火はするものの炎が安定しているとは言えず、数分は待つ場面に遭遇したことがある。
それでも、この値段は魅力だろう。




BORDE-Brenner(ボルドーバーナー) ボルドーバーナー

構造は至ってシンプル、ホワイトガソリン用だが五徳すら装備していないので荷物の隙間に収まる。
(周囲の岩などを使ってコッフェルを浮かせ、その下にボルドーバーナーを入れる使い方)
今も変わらぬスタイルは豪華装備に飽きたマニア層などに人気。
但し、ストーブを全く持っていない人が最初に買う品としてはハードルが高く、避けたほうがいい。




武井バーナー BC-101

長い間灯油ストーブ(ケロシンストーブ)を作り続けて高い評価を受けている武井バーナーのコンパクトモデル。
沸点の高い灯油を使うことにより柔らかく静かな炎を楽しむことが出来る。
但し、コンパクトも出るとは言え、他のストーブよりも一回り大きく感じるので現物を確認してから購入するのが良い。
品質については十分なレベルなので安心して購入できる。




MANASLU(マナスル) マナスル96

武井バーナーと同じく灯油ストーブを作り続けている数少ない貴重なメーカー。
デザイン的にはマナスルのほうが柔らかく感じ、曲線の美しさに惚れ惚れする時がある。
マナスル96は非常に小型なのでバイクへ積むのも大して苦にならないと思われるが、余裕があるなら121にしたほうがいい。
というのも、タンク容量が小さく、持続時間に不満を持つケースがある。
これは使う人次第で不満に思ったり、思わなかったりするのでなんともいえない部分だ。




トランギア アルコールバーナー

アルコールを使用するストーブとしては定番というか、これしか知らない人も多いのではないだろうか?
本体の値段も非常に安く、持っていて損は無いかもしれない。
但し、ボルドーバーナーと同じくコッフェルなどを支える五徳などの装備が標準では装備されていないので注意。
専用五徳もあるが折りたたみできず嵩張るのでトランギアB25用トライアングルゴトクを使用したほうがいいだろう。
「100ccのアルコールで25分の燃焼時間」とあるが、一枚の板で簡単な火力調節も可能なことから20分~30分の持続時間だと思ってもらって構わない。
自然着火なので動作音はほぼ無音、火力を全開にした時はシェラカップのお湯を沸かすくらいなら余裕の火力を持ち、ソロキャンプのメインストーブとして使うにも十分対応できる。(500~700mlのコッフェルでインスタントラーメンや米を炊く程度の簡単な料理の場合)
トランギア アルコールバーナーにキャンドルランタンという組み合わせならば、どちらも無音で動作するので非常に静かな環境を構築できる。(ドラゴンフライにガスランタンを全開という組み合わせの真逆に位置する静穏性)



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