単純に「照らす」という用途にしても周囲をくまなく照らすのか、それとも自分の手元だけを照らせば良いのかで使用する道具も大きく変わり、登山などを趣味としている人はランタンを持たずにヘッドランプだけで夜を過ごすこともある。
バイクを使用したキャンプではヘッドランプ一つというストイックな環境は必ずしも要求されない。
要は積めるだけ積めば便利になるし、敢えて積まない自由もある。
キャンプの楽しみの一つに「暗闇を愉しむ」というのがあるだろう。
暗闇を突き刺す強烈な光を好む人もいれば、月明かりを楽しむ人もいる。
ランタンはその中間とも言えると思う。
適度に明るく、でも便利に、そんな視点が基本スタンスだと思う。
■種類
灯りの種類にも幾つかあるが、この場合の種類は光源の動力である「燃料」を意味する。
電池・ガス燃料・キャンドル(ロウソク)・液体燃料が大別される主なものだ。
最初にキャンプ道具を揃えるのであれば無難な電池系がいいだろう。
・電池
一昔前は電球や蛍光灯(稀に冷陰極管)だったが、現在ではLEDが主流となっている。
そのLEDも白色LEDだけではなく電球色(暖色)の製品も発売されており、長大な持続力が評価されて電池系の灯りでは主流となっている。
電池系最大のメリットは野外・テント内問わずに使えることと扱いも簡単で、重量も軽く、容積も小さくなるのでライトパッキングや初心者向けに最適なことだ。
単三電池を4本使用した電球(ニップル球など)のランタンは持続時間が4~8時間と一晩使えば電池がなくなってしまうのと、電球そのもののガラスが焼けて明るさが落ちたり、最悪の状況ではフィラメントが切れる球切れが発生するなどLEDと比較してデメリットが目立つ。
但し、白色LEDの光は波長の関係で冷たく感じたり、人によっては見辛いという意見もあるので万能ではないが持続時間が20時間を越えることと、LED単体は基本的に球切れという概念が無いので安定した稼動が見込めるなどメリットが多い。
特に連泊を重ねる旅の場合はコンビニなどで乾電池を買うか、充電池と充電器+インバータの組み合わせで移動中にバイクから充電可能となるなど動力の確保が容易でもある。
・ガス
ランタンのみが存在、ストーブと同じで2種類に分かれる。
一つはキャンプ専用のT型缶、もう一つはカセットコンロ用のカセットガスボンベ用の2種類が主流だ。
ガソリンなどの液体燃料よりも扱いが簡単なので一昔前はキャンプツーリングの主役でもあった。
現在はマントルの扱いやガス缶のスペースや補給などが面倒などの理由でLEDランタンに転向した人も多いが、LEDと違いガスが燃焼した自然で暖かい光を好んで使う人も少なくは無い。
特に霧がかってきた状況などでは波長の短い光であるLEDランタンと違い、長い波長の光を持つガスランタンは光が届く範囲が広いので認識しやすいメリットもある。
パッキングの荷物容積はそこそこ必要だが、カセットガスボンベであれば百円均一店やコンビニでも入手かのうなのでキャンプ用T型缶よりは入手性に優れ、明るさも確保できる。
最大の欠点はテント内の使用は危険ということで電池ランタンやヘッドランプなどの灯りが別途必要になることだろう。
また、マントルが移動する毎に崩れてしまい、連泊しない数泊のキャンプでは夕方になるとマントルを焼く作業が発生するなどコスト・手間共に面倒となる場合がある。
・キャンドル(ロウソク)
絶対的な明るさは無いが、揺れる炎で雰囲気を出すには最高のアイテムとも言える。
ランタンに限定されるが、タブ式キャンドルの小型ランタンと大きなロウソクを使用した比較的大型なランタンの2種類が存在する。
タブキャンドルランタンは手軽で本体が安価、タブキャンドルは百円均一ショップで8~10個100円のタブキャンドルが使えるので汎用的な入手性の高さとコストパフォーマンスは良いのがメリットだ。
しかし、1個のタブで凡そ4時間程度の短い燃焼時間と、ロウに熱が伝わりきるとタブの中は液状になったロウだけになるので移動させるとロウがこぼれてしまう扱いにくさがある。
大きなロウソクを使用したキャンドルランタンはタブ式よりも持続時間が長く(あたりまえ)、燃焼中も移動が簡単というメリットがあるが、専用ロウソクであるので単価が高いと感じてしまう。
そのかわり、点火・消火は任意に可能なので扱いやすさではこちらだろう。
たかがキャンドル、されどキャンドル、本を読むには暗いものの目が慣れてくるとキャンドルランタンでも十分だと思えてしまう、
・液体燃料
これもランタンに限ってしまうが、一般的な製品の主な液燃はガソリンだろう。
液燃ストーブと似たような構造になるのでサイズが大きくなる傾向が強く、また、ハイパワータイプが主流なのでソロキャンプ向けの小型製品は無いに等しい。
その為、候補となる製品が著しく少ないことからバイクキャンプでの普及率は低い。
利点は燃料がガソリンスタンドで入手可能なことから長期間のキャンプツーリング時に燃料補給が簡単なこと。
基本的にバイク向けのキャンプツーリングでは候補から外すしかないだろう。
製品が常に入手可能というわけではないが、いわゆる「アルコールランプ」的なランタンもある。
Colemanなどのメジャーなメーカーの製品ではないことが多いので一般的に入手し辛い。
キャンドルランタンと同じ規模の炎を出すので絶対的な明るさは無いが、アルコールストーブ愛用者は燃料の統一が図れるのでメリットがある。
・その他
ガスランタンでもマントルを使わない製品が存在する。
G'zメタルランプ STG-00だが、金属をマントル代りにしているので確かにマントル崩れは発生しない。
しかし、マントルに相当するメタル部分の面積が少ないことと、濃い橙色の光なのでキャンドルランタンより暗く感じる感想を聞いている。
変り種としてはカーバイドランプ(アセチレンランプ)がある。
カーバイド(炭化カルシウム)と水が反応してアセチレンガスを発生し、それを燃やす仕組みになっている。
単なる小石にしか見えないカーバイドは予備を持ち歩くにも便利、反応する水は普通の水を使用するので入手は非常に簡単ということでキャンプ向けなのだが、肝心の本体が入手できない。
夜釣り用の大きくて明るすぎる製品ならあるが、ソロキャンプ向けの小型機器は大昔の炭鉱作業用や懐中電灯代わりなど前世紀の遺物に頼るしかない。
明るさはソロキャンプ用小型ガスランタン並みなので文句なし、マントル不要なことから移動時のマントル崩れも心配ないとメリットはあるが、アセチレンガスを噴出す仕組みなので失火した場合は火気厳禁などデメリットもある。(通常のガスランタンと同じ扱いで十分だが、ガスの性質に注意が必要)
実はこの灯りがキャンプ道具を選ぶときにテントと並んで個人の好みが大きく出る分野だ。
人によってはヘッドランプだけのストイックな装備で臨む場合もあるし、また別の人はガソリンランタンで暴力的なまでの圧倒的な光で臨む場合もある。(大抵は小型ガスランタンかLEDランタンなので上記は極端な例だ)
10年前までは白色LEDが普及しておらずキャンプ場で灯りといえばミニマグライトにガスランタンというのが定番であるような時代も存在したが、LEDの進化と普及によって劇的に変化してきた10年間でもある。
そんな中でキャンドルランタンだけは不動の地位というか、常に一定の支持を受けているのは塚手見れば判る自然の光の威力だろう。
最初はLEDランタンで手軽に済ませていた人も、やがて面倒だけど「使った感」が強いアイテムに心惹かれ、そして散財してノウハウを溜めていくのだと思う。
便利なLEDが普及した時代だからだろう「敢えて不便を愉しむのもキャンプ」そんな言葉が頭に浮かぶ。
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