[災害]長期の避難に用意しておきたいもの(2)

Ryu Shobi

2011年04月19日 15:02

避難所で長期(凡そ1週間から4週間程度)に渡って滞在する場合の装備を考えて見た。
まずは「食」に並んで生命活動の要とも言える「寝る」場合の装備だ。
避難所として活用されやすい学校の体育館や公民館の床を生活の場とするケースでイメージして欲しい。
また、避難時は車や台車は一切使わず、手持ちのカバンで家族が逃げる状態を想定している。
1)寝床

冷たく固い床、そこに寝るのは大抵の人なら嫌がるはずだ。
しかし災害時には自宅のベットも布団も持ち込む余裕が無いケースがほとんどだと思う。
極限状態ならば床だろうがコンクリートの上だろうが寝ることができてしまうが、数日も経過すると体の節々が痛くなってきたり、最悪は腰を悪くするなど実害も出てきてしまうケースがある。
そこで手軽に持ち運び出来て体へのダメージが少ない道具を考えるのだが、アウトドア系の中で登山する人達が山小屋に泊まる場合がかなり近くなる。
木でできた床の上にマットを敷いて寝袋に潜って寝る、まさに避難所に近い条件だ。(大きく違うのは山小屋に泊まる人はレジャーが大半で装備も体の作り方も前もって想定されていることだ。)


[マットの素材]

この登山用マットは一昔前なら銀マット、現在ではEVAフォームのウレタンマットを通り越して空気を注入して厚みを持たせるインフレータブルマットが主流だろう。(一部、軽量を求める人がスポンジ無しのエアマットを愛用しているが価格・扱い安さなどで割愛)
このインフレータブルマットというのは構造上は単なる空気を入れるマットなのだが、単なるエアマットだと冷たい床や地面が触れている底面と背中が触れている上面で大きく温度が異なる冬場などはマットの中で空気が対流してしまい、背中の熱を底面の冷気で冷やしてしまい、結果的に体の熱を地面(床)に奪われていく結果になりやすい。
インフレータブルマットは中にスポンジを入れることで空気の対流を防ぎ、無駄に体からの熱を奪わない設計になっている。
しかも使わないときは空気を抜いてペシャンコにして丸めて小さくすることが出来る利便性も持ち合わせている。

インフレータブルマットは空気を入れて厚みを持たせるのでパンクが怖いのは確かだ。
その場合はウレタン系の素材を使った単なる「マット」しかない。
昔ながらの銀マットや、EVAフォームを使ったリッジレストやZレストのような圧縮できないマットだ。
欠点は持ち運ぶ時に嵩張るので家族全員に用意する場合などは面倒ということだ。
このあたりは「パンク修理する前提」でインフレータブルマットを使うか、「持ち運び時の面倒を受け入れて」銀マットなどのウレタンマットを使うかだ。

寝心地的には空気で体の凹凸を吸収してくれるインフレータブルマットが最も良い。(もちろん、布団やベットには敵わない)
ウレタンマットは "ある程度" までは吸収してくれるが、それ以外は高反発マットと化してしまうので慣れが必要になる。(そのかわり耐久性はバツグンに良い)
また、保温性に関しても体への密着具合の関係でインフレータブルマットが一般的に良い。


[マットの長さ]

登山系では荷物を軽くするのが最優先となるので、マットの長さは足のかかとから後頭部まで全ての面積をカバーすることはせず、肩からお尻あたりまでで十分とする意見が多い。
マットでカバーしきれない部分の頭は予備の着替えなどを枕にしてしまい、太ももから下は空になったザックなど適当に敷いて済ませてしまうそうだ。
人が寝る時は[後頭部][肩(背中の上部)][お尻][ふくらはぎ][かかと]の5点を支点に体重を支えるが、体の熱の保護と血液の流れを考えて肩からお尻までの胴体部分に的を絞る考え方のようだ。
メリットは全身を覆うマットの長さと比べて約半分で済むこと、つまり軽量化に大きく貢献できる。
この点からも防災用のインフレータブルマットとして「多くの人数分のマットが少ないスペースで持ち運べる」メリットが出てくる。
理想から言えば長期滞在時には180cmクラスのスタンダードマットが望ましいのだが、収納時のサイズも倍になるので悩ましいところだ。
参考までに、イスカのコンフィマットレス180(最大長48(肩幅)×180(全長)×3.2(厚さ)cm)の収納サイズが直径15×32cmで重さ680gになるが、厚みが1.5cmと最低スペックになるものの、同じイスカのショートマットの代表格製品であるXライトマットレス95(50(肩幅)×95(全長)×2(厚さ)cm)では収納サイズが直径9×29cm、重量270gと非常にコンパクトで軽くなっている。
コンフィマットレスにも120cmの製品があるが、180cmの製品の約6割程度の重量・容量だ。


[お薦めのインフレータブルマットは]

持ち運びに余裕があるなら180cmクラスのイスカ コンフィマットレスやサーマレストのトレイスやプロライトシリーズがお薦めだ。
ただ、荷物を少しでもコンパクトまたは軽くしたいのであればXライトマットレス95で十分だと思う。
どのみち布団には遠く及ばないので我慢するなら割り切ったほうがいい。


[お薦めのウレタンマットは]

個人的にはサーマレストのリッジライト(ショート)がお薦めだが、ホームセンターで売っている銀マットでもなんとかなるが、大抵の人は二晩目あたりから慣れない固い寝床によって体の各所に痛みが出てくるはずだ。
大抵の銀マットは厚み8mm、対してリッジレストは厚み20mm、倍以上の厚みだが銀マットのウレタンよりも柔らかいEVAフォームによって倍以上の快適さがある。
ただし、デカい、邪魔、かさばる、でも暖かくて頑丈、悩ましいところだ。



[提案?]

私の場合の避難道具は不要になった旅行カバン(通称:ガラガラカート)にイスカ Xライトマットレス95、ウルトラライトマットレス120、モンベルのエアマットが入っている。
Xライトマットレスは普段のキャンプでも使うが、他の2つは退役した装備だ。
全て空気で膨らます形式のマットなのでリペアキットは3つ分入れてある。
これはやりすぎ?の例だが、これから長期滞在向けに何かをそろえるのであれば以下のような構成を提案してみたい。

・家族4人(大人2人に子供一人)だとして
 →Xライトマットレス95を3本
 →銀マットを1本(幅60cm、長さ180cm、厚み8~10mm)

銀マットはカバンなどに入りきらない収納サイズになるのでカバンに横付けで縛るか、別途手持ちとする。
これだと一人だけ180cmになるのだが、これには理由があってXライトマットレスが原因不明のパンクで使えなくなったとしても銀マットを半分に切ることで90cmのショートマットが2本になるので、それで補うという考えだ。
寝心地を引き換えにバックアップとする考えだが、被災地の物資が補給されにくい環境ではかなり心強いはずだ。(最初から全て銀マットにしておけ、という意見さておき…)

また、百円均一ショップなどでも売っている厚みが2mm程度の銀シート(1mm程度のウレタン素材のシートに銀シートが貼り付けてあるもの)があるとかなり有効だ。
足元の冷たさなどはこれで十分。
元が薄いので畳んだときも嵩張らない。
私の場合は一次避難カバン(ザック)に60cm×90cmの最低面積を折り畳んで、ザックの背中部分に入れてある。
移動中はザックの荷物のゴツゴツ感を背中に伝えにくくし、避難先では広げて座る場所のシートにしたり、最悪は寝床にする考えだ。
Xライトマットレスのようなショートマットと組み合わせる時は足元の冷気遮断に使う。



今回の東北地方の震災で避難所の床に毛布を敷いただけの環境で寝る生活が続いている人も多いと聞く。
ダンボールでも手に入れば、それを下に3枚以上敷く(経験上、3枚以上が快適さ分岐だった)ことで床のゴツゴツ感から逃れられるが、そんな環境に銀マットがあれば劇的に改善されるし、疲れも残らなくなる。
更にインフレータブルマットがあれば更に快適になる。

個人差があるだろうが、環境の変化に慣れるまで最初の3日間が最も辛い時間と思われる。
4日目くらいから体が順応し始め、最初の3日間のダメージも回復した1週間経つ頃には余裕が出てくるはずだ。
次に記事にする「保温(冷却)」と併せ、睡眠環境を少しでも改善することで体力を回復させ、避難先で次のアクションを起こす為の原動力とする大事な要素となる。

尚、本当に長期滞在まで睨んで準備した人はキャンプしないまでも自宅で試用してみたほうがいい。
インフレータブルマットであれば空気をどの程度まで入れれば快適なのか、また、銀マットなどではどの程度まで寝心地が悪いのかなど普段の生活とのギャップを実感しておくのは非常時に大事な情報として活きてくる。
今回の震災のニュースを見る限り、本人の意図とは関係無しに長期の避難生活となるケースがあるので「長期滞在は考えたくないし、その場合は親戚を頼るなど、どこかに移動するから」と考えている人も一考はしておいたほうが無難だろう。

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