■電気の発生手段
電気の補充をする為には、まず電気を発生させなければならない。
市販の乾電池が配布されれば電池ごと交換になるが、ニッカド・ニッケル水素などの充電池ならば補充電することで再び使えるようになる。
この電気を発生させる方法は大きく分けて2種類が実用的な領域だ。
一つは太陽光発電、もう一つは手動発電だ。
太陽光発電は直射日光下で発電パネルを広げる御馴染みのものだ。
手動発電は災害ラジオなどに見られるハンドルをグルグル回すのが有名だろう。(稀な製品では握ることで発電するものや、振ることで発電する形式もある)
どちらも一長一短の性質を持つ。
[太陽光発電]
太陽光の下に置くだけで充電してくれる便利道具だが、欠点として発電効率の悪さと大きさの問題がある。
パネルを大きくすれば発電も多くできるのだが、持ち運びに難がある。
太陽パネルの面積=電力と考えても良いだろう。
バイオレッタなど小型の製品では単三ニッケル水素電池を2本充電するのに14時間が目安になっているなど、1日の日照時間では足りないというのが現状だ。
但し、バイオレッタでは複数台接続することで充電効率を上げることが出来、別の会社の製品であるPowerFilmは折りたたみ式のパネルを持つ製品だが単三ニッケル水素電池を2本充電するのに5時間弱~4時間弱という実用的な数字を持つものもある。
但し、いずれの製品も太陽光だけでは電圧・電流が安定しないため、発生した電力を電池に蓄えてから使用する事が前提になっている。
また、太陽光発電は太陽光が無いと発電できないので夜は使用できない(当たり前で)
他にも曇りや雨の天候では発電効力も落ちることから非常時の電源としては安定性に課題を持っているのも確かだ。
実使用の問題では避難所で使う場合に長時間の放置が必要となるので盗難の恐れも出てくる。
あと、太陽光発電機器は可搬性を求めると単三電池、もしくは携帯電話の充電を前提として割り切った設計が多く、それ以外の機器では単三電池から充電する機器が必要になるなど機材が増えてしまうリスクがあるので注意が必要だ。
単四電池の場合は単四→単三アダプタが別途必要など確認したほうがいい。
値段を気にしないなら12Vを出力する太陽パネルも薄く・以前より低価格で流通し始めている。
大きさはちょっとしたポスター程度のサイズ(19インチテレビくらい?)になってしまうが、丸めたり折りたためる製品があるので自宅で使うには十分だろう。
充電先は車用のバッテリーが安くて入手しやすく、車用のシガーライター接続機器が使えるので汎用性が高い。
[手回し発電]
防災ラジオなどに装着されていることが多い、折りたたみハンドルでグルグル回すアレだ。
中にはモーターに似た構造の磁力式発電ユニットが内蔵されている製品がほとんどだが、回して発電した電力は内蔵の二次電池(ニッカド・ニッケル水素など)に蓄える形式がほとんどだ。
発電量は回したハンドルの回数によって変わるが、磁力が大きければ大きいほど発電効力が上がるがハンドルの重さも増大することからメーカー側では程ほどの重さに調整していることもあって、思ったより発電容量は大きくないのが現状だ。
現状では、LEDライトやラジオなど少しの電力でも一定時間動く機器と組み合わされているので、1分間ハンドルを回すと10分程の時間だけ機器が動く電力を得ることが出来る。
手回しを1分続ける程度ならば苦にならないが、この動作を5分続けるのは以外にキツいし飽きる。(これで50分程度の駆動が可能な作業量だ)
よって、携帯電話の充電など長時間に渡る手回し動作は苦痛(というかヒマ)になる事もあるので、「これさえあれば何でも充電が出来る」と思わず、乾電池も切れた・日の光が無い状態が続く環境の最後の手段という意味合いで用意しておくのが無難だろう。
しかい、概念上は電池切れが無い(手回しで発電すればいい)ので普段は玄関や車の中に放置しておき、緊急時にとりあえず手元を照らす・情報を得るだけに使うといった、備蓄品のラジオやライトを出すまでの「つなぎ」として使うには最適な製品でもある。
(他にも備蓄した電池を使い切った状況でも、一時的にせよ電力を生み出せるので安心感を得ることが出来る)
但し、手回しハンドル部分の構造が頑丈とは言い難い製品が存在するので乱暴に回すとハンドルが折れるなど致命的なトラブルが発生している話も聞く(使う側の問題もあるだろうが)ので、可能ならば購入前に自分の手で回して確認するのがいい。
[発電機]
屋台や工事現場で見る機会が多い発電機だが、最近では非常に小型な製品も出てきている。
発電時の動作音も小さいのでお薦めといえばお薦めだが、幾つかの注意点が有る。
一つは燃料の備蓄が別に必要なことと、音が小さくなったとはいえ無音ではないので周囲への影響だ。
燃料に関してはガソリンそのものが2~3ヶ月程度しか持たないことがほとんどなので、ガソリンの缶詰など長期保存可能な燃料を別途用意する必要がある。
特に古い発電機は2ストロークエンジンのものがあり、これはガソリンにオイルを混ぜた混合油を使うので発電機のタンクに残したままだと変質した混合油が原因でエンジンを壊すことがある。
最近の発電機は4ストロークエンジンなので混合油を使う必要が無く、残念量の問題は軽減されている。
騒音については低周波音などが響くので夜間に動かすことは苦情の元になるので使う時間帯にも気を使いたい。
何よりもガソリンエンジンなので燃料が無いと動かない。
燃料の備蓄、もしくは補給を考えておかないと意味が無いので本気で発電機を考えているならば燃料の保存方法と期間を考えてから購入を検討するのが得策だろう。
(携帯電話や電池の充電レベルであれば発電機は不要、大家族の一軒家・医療機器が必須の人など特定用途に絞られると思う)
■その他
[携帯電話の充電]
スマートフォンであれば心配する必要は無いと思うが、昔ながらの携帯電話(いわゆるガラケー)ユーザーならば電池切れによる内容の消失を心配したほうがいい。
ガラケーの古い機種は電池によって電話帳や受信メールなど大事な情報を保持している。
メインバッテリーを外してもこれらの情報が消失しないようにセカンドバッテリーが内蔵(スーパーキャパシタであったり、充電式リチウム電池であったりする)されているが、これも含めて電力がゼロになるとオールリセット状態になってしまう。
電源を切った状態にしても「電源ボタンが押されたか」という状態監視に加え、メモリそのものの保持に電力が使われてしまうので、メインバッテリーの電力が無くなってから1週間から2週間ほど(機種によって異なる)すると記録内容は全て消えてしまうだろう。
iPhoneなどのスマートフォン系はフラッシュに保存されているので基本的に消えないはずだ。(全ての情報が保持されているかは不明)
[乾電池の充電について]
世の中には乾電池の充電器なる製品が存在する。
何度か充電することが可能となっているが、市販されている乾電池は放電することしか想定されておらず、充電した時の挙動については未知数とも言えるので、シビアな状況である災害時に乾電池を充電する行為は避けたほうがいいだろう。
「まったく明かりがないので懐中電燈を照らすだけ…」など逼迫した状況ならば背に腹はかえられないかもしれないが、最後の手段だ。
むしろ、そのために機材を買い揃えるならば先に書いた振るだけで電力が発生する「電池のいらないライト」や、ライト機能もある手回しラジオなどを複数個揃えたほうがいい。
[ニッケル水素の充電時間について]
ニッケル水素電池は充電のされ方に特徴があり、蓄電量の70%までは比較的短時間で到達するが、そこから先はペースが鈍ってしまう。
たとえば先に書いたバイオレッタVS-01の単三充電池の充電時間は「14時間」となっているが、乱暴な言い方をすれば半分程度の時間は半分以上の蓄電量ともいえる。(70%に到達するまでの時間は蓄電量やメーカー・製品によって異なる)
私が見た資料では、70%に到達するまでに全体の6割の時間を必要とし、残り30%を全体の4割の時間で充電していくものであった。
細切れ充電は電池によくない(メモリ効果)のだが、災害時にそのようなことを気にしていられない。
勿論、フル充電させたほうが心強いだろうが、天候や場所の関係で日照時間が短い場合は「70%」のことを思い出しても良いだろう。(気になる方はご自分で調べて見てください、私が見た情報が全てとは思いませんので)
避難した先では水と食料、季節が冬なら暖を取るのが真っ先に必要とされるだろう。
しかし、夜になれば光、そして次に必要なのが情報入手先としてラジオや携帯などが必須になる。
短期であれば内蔵された電池の電力でなんとかなるが、長期になっても動く機器があると心強い。
まだ備蓄されていないのであれば手回し充電ラジオ(ライト)の一つを検討してみてはどうだろうか?
(この記事を書いている段階では入手困難なようですが…)
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