[災害]長期の避難に用意しておきたいもの(3)

Ryu Shobi

2011年05月11日 10:50

避難所で長期(凡そ1週間から4週間程度)に渡って滞在する場合の装備を考えて見た。
生命活動の要とも言える「寝る」場合に不可欠な温度管理の装備だ。
避難所として活用されやすい学校の体育館や公民館の床を生活の場とするケースでイメージして欲しい。
また、避難時は車や台車は一切使わず、手持ちのカバンで家族が逃げる状態を想定している。
2)保温(または冷却)

■保温

日本には温度の差が激しい「四季」というものが存在する。(ここ近年は差が激しいようだが…)
この温度の変化は被災した現場にも容赦なく訪れる。
今年の東日本の震災では避難所へたどり着けた人にも外気温が氷点下になる朝が即座に訪れたと聞くが、着の身着のままだった人には相当きつく、実際に低体温症に陥ってしまわれた方もいたとニュースでは伝えられている。

津波のように衣服が全て濡れてしまった場合は着替える、または焚き火などで暖をとりながら乾かすしかない。
今日の記事では乾いた服で寝る時に「保温」をどうするかという視点で考えて見たい。
外気温は夜で0度、朝方には氷点下まで落ちる場合を基準としているが、日中から氷点下の地域もあるし、氷点下にならない地域もあるので、読まれている方はご自分の地域の状況に合わせて読み替えて欲しい。

[シュラフの素材]
登山・キャンプ装備で最も手軽に保温しつつ寝る装備はシュラフ(寝袋)だ。
寝袋の断熱・蓄熱素材は手に化学繊維とダウン(羽毛)に分けられる。
化学繊維はポリエステルなどの化学繊維を綿のように織り込んで作るが、最近では羽毛のような形状を化学繊維で再現したものも含む。
結論から述べるとダウンが最も軽くて小さく収納でき、そして暖かい。
化繊もダウン同様に暖かく出来るが、質量はダウンよりも多く必要とするので重く、収納サイズも大きくなってしまう。

[シュラフの対応温度]
シュラフのカタログページには「適正使用温度」などが記載されていることがある。
これは快適にぐっすり眠ることが出来る温度ではなく、なんとか寝ることができるギリギリの温度と思ったほうがいい。
また、温度に関する表記が無いシュラフはがんばっても10度程度までしか対応できない夏場専用と割り切ったほうがいい。
この温度表記はメーカーごとに異なり、業界標準となる指標は存在しない。
「-10度対応!」と書かれていても、人によって体感温度が異なるので実際は「0度」までしか対応温度と思えなかったという話も聞くので「参考」程度に考えるのが無難だ。
あとは実際に使った人のクチコミだが、これも温度に対する個人差があるので参考情報に留めておくのがいいだろう。

[シュラフの形状]
大きく分けて2種類ある、一つは長方形の「封筒型」、もう一つは足元がすぼまった「マミー型」だ。
本格的な登山向けシュラフではマミー型が主流となっているので温度を優先させた場合、選択の余地はほとんどなくなるはず。
防災用品として省スペースを望むなら封筒型を避けてマミー型にするのがいい。
ただし、マミー型は足元の自由度が下がるのが一般的な概念だ。(モンベルのストレッチ系など改善されている製品もある)
封筒型はやや自由度が高いので楽に寝ることが出来るが、反面、体とシュラフの間に隙間ができるので保温性が劣る面も持ち合わせているので一長一短だ。

[防災備品向けのシュラフは?]
予算が許すなら小さくて暖かいダウンシュラフだが、実売価格が2万円前後と気軽に購入できるものではない。
化繊シュラフならば同じ性能で価格は半分以下になるが、収納時の質量は2倍から3倍になる。
自宅に居る時は普段の「ふとん」があるのでシュラフの出番は少ないはずだ。
すると避難所などへ移動して使う前提となるので「小型・軽量」が望まれるが、一次避難道具としては量が限られる。
快適さは捨てることになるが夏用シュラフでスペースを削り、最低限の保温に留める方法もある。

まず、シュラフとしては夏用の化繊マミーシュラフで妥協、これは1個5千円程度で販売されているので価格的にも負担が少ない。
中にはイスカ ウルトラライトのように15度程度までの性能しか無いが、コンパクトになる製品がある。(値段はそこそこ)
足りない性能を補うには以下の品などが有効と思われる。

・サバイバルシートのシュラフ版
・フリース生地のブランケット

アルミを蒸着もしくは織り込んだサバイバルシート的な素材でできた非常用シュラフが存在する。
握りこぶし1個程度の収納サイズで1個2千円程の値段だったと思うが、これをシュラフカバーとして使うことで性能をアップできる。(ガサガサうるさい音が出るのが欠点)
更にフリース生地のブランケットで肩や腰などをカバーすればかなり暖かくなる。
地域によっては甘い装備となって寝ることすら難しいかもしれないが、荷物スペースとの兼ね合いを考えると妥当な範囲かと思う。

尚、なぜフリース生地のブランケットなのかと言うと、下へ敷いて冷気を緩和するなど起きている時にも使えるメリットがある。
また、化繊生地なので万が一濡れても乾くのが早いので薄い生地で良いから化繊ブランケットを一人一枚用意するのを強くお薦めする。

■冷却

保温はひたすら布地を重ねれば対策となるのだが、冷却は簡単ではない。
夏場に災害が訪れないとも限らないので、一応は対策しておきたい。
とは言っても、こちらはシュラフのような定番アイテムに相当するのが

う ち わ

これだけだ。
風を起こすにも電力は貴重となるので自然の風を期待するしかない。
バッテリー内蔵や電池駆動の扇風機も存在するが電力の供給(補充)の問題が付き纏う。
何よりも複数の人を同時に冷やす風を送り出せる製品は大きいボディサイズとなるので持ち運びが現実的ではない。
せめてもの抵抗で団扇、または扇子を避難道具に忍ばせておくしかないだろう。
実際の温度は下がらないが、汗拭きシートなどで爽快感を強めにしたものがあるが、それで体を拭いてから風を送ることで気分的に改善することが出来るが、がんばってもそこまでだろう。




暑いのは熱中症の心配を除けば一定の我慢で凌げる可能性が高い。
しかし寒いのは低体温症になり、最悪は死に至る可能性が高いという厄介な性質を持つ。
一次避難向けのカバン(ザック)に一定の装備があるなら、長期滞在前提の避難カバンには対低温装備と寝るためのマットの2点を重点に据えて構築するのを強く薦める。

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